亜鉛は、体内で作ることができない必須ミネラルの一種です。体内に約2〜4g存在し、歯、骨、肝臓、腎臓、筋肉などに多く含まれます。200種以上の酵素の構成や酵素反応の活性化、ホルモンの合成や分泌の調整、DNA合成、タンパク質合成、免疫反応の調節などに作用し、身体の成長と維持に必要な栄養素です。
亜鉛が不足すると?
亜鉛が不足すると、以下の症状が起こる可能性があります。
- 味覚障害
- 口内炎
- 皮膚炎
- 脱毛
- 免疫力の低下
- 疲労感
- 風邪などの感染症にかかりやすくなる
味覚障害
味覚障害とは、味覚に対する感度が低下したり、味を感じなくなったりする症状全般を指します。何を食べてもまずく感じる、何も食べていないのに口の中に苦味や塩味などを感じるといった味覚異常もあります。
味覚障害の原因は、大きく分けて以下の2つがあります。
- 末梢性味覚障害
末梢性味覚障害は、舌や口腔内の味を感じる細胞(味蕾)の障害によって起こります。味蕾は、舌の表面や奥にあり、「味蕾小窩」とよばれる小窩の中に存在しています。味蕾小窩には、甘味、酸味、塩味、苦味などの味を感じる受容体があり、食べ物に含まれる味物質が受容体に結合することで、脳に味覚信号が伝達されます。
末梢性味覚障害の原因としては、以下のようなものが挙げられます。
- 口腔内や咽頭の炎症
- 口腔内の腫瘍
- 舌の外傷
- 薬剤の副作用
- ビタミンB12欠乏
- 亜鉛欠乏
- 加齢
- 中枢性味覚障害
中枢性味覚障害は、脳の味覚中枢の障害によって起こります。味覚中枢は、脳の第10脳神経(舌咽神経)や第7脳神経(顔面神経)の核部に存在しています。味覚信号は、舌や口腔内の味蕾から第10脳神経や第7脳神経を経由して脳の味覚中枢に伝達され、そこで味覚を認識します。
中枢性味覚障害の原因としては、以下のようなものが挙げられます。
- 脳卒中
- 頭部外傷
- 脳腫瘍
- パーキンソン病
- アルツハイマー病
- ハンチントン病
- 多発性硬化症
味覚障害の症状は、以下のとおりです。
- 味覚低下
- 味覚消失
- 味覚異常
味覚低下は、味覚が鈍くなる症状です。食べ物が薄味に感じられたり、味が分かりにくくなったりします。
味覚消失は、味覚を感じなくなる症状です。何を食べても味がしなくなるため、食事が楽しめなくなります。
味覚異常は、いつもと違う味に感じる症状です。例えば、甘いものが苦く感じたり、酸っぱいものが塩辛く感じたりすることがあります。
味覚障害の診断は、問診や視診、味覚検査などによって行われます。問診では、症状の程度や経過、原因となる可能性のある疾患の有無などを調べます。視診では、口腔内の炎症や腫瘍の有無を確認します。味覚検査では、甘味、酸味、塩味、苦味などの味覚を感じる能力を調べます。
味覚障害の治療は、原因によって異なります。末梢性味覚障害の場合は、原因となる疾患の治療を行うことで、味覚が回復する可能性があります。中枢性味覚障害の場合は、原因となる疾患の治療を行うことは困難ですが、味覚訓練によって、ある程度の味覚を回復できることがあります。
味覚障害を予防するためには、以下のことに気をつけることが大切です。
- バランスの良い食事を心がける
- 口腔内の清潔を保つ
- 喫煙や飲酒を控える
- ストレスをためない
味覚障害は、生活の質を大きく低下させる症状です。もし、味覚障害の症状がある場合は、早めに耳鼻咽喉科を受診して、原因を調べてもらいましょう。
亜鉛不足の原因
亜鉛不足の原因は、以下のとおりです。
- 食事量が不足している
- 亜鉛を多く含む食品を摂っていない
- 消化吸収が悪い
- 亜鉛の代謝が悪い
食事量が不足していると、摂取できる亜鉛の量も少なくなります。また、亜鉛を多く含む食品を摂っていないと、亜鉛の不足につながります。
消化吸収が悪いと、摂取した亜鉛が十分に吸収されません。また、亜鉛の代謝が悪いと、亜鉛が体内でうまく利用されません。
亜鉛不足の予防・対策
亜鉛不足を予防・対策するためには、以下のことに気をつけましょう。
- 食事量を適切に確保する
- 亜鉛を多く含む食品を摂る
- 消化吸収を助ける食品を摂る
- 亜鉛の代謝を促進する
食事量を適切に確保するためには、主食・主菜・副菜をバランスよく摂ることが大切です。主菜には、肉、魚、卵、大豆製品など、亜鉛を多く含む食品を積極的に摂りましょう。
亜鉛を多く含む食品には、以下のようなものがあります。
- 肉類:牛肉、鶏肉、豚肉、レバーなど
- 魚介類:カキ、牡蠣、イワシ、サンマなど
- 卵
- 大豆製品:豆腐、納豆、きな粉、豆乳など
- ナッツ類:アーモンド、カシューナッツ、ピーナッツなど
- 種実類:ひまわりの種、かぼちゃの種、ごまなど
消化吸収を助ける食品には、以下のようなものがあります。
- 食物繊維:野菜、きのこ、海藻など
- ビタミンB1:豚肉、うなぎ、レバー、玄米、大豆、ナッツ類など
亜鉛の代謝を促進する食品には、以下のようなものがあります。
- ビタミンC:レモン、オレンジ、キウイ、ブロッコリー、パプリカなど
- ビタミンB6:豚肉、うなぎ、レバー、玄米、大豆、ナッツ類など
- 鉄分:レバー、赤身の肉、ほうれん草、ひじき、カキなど
亜鉛を多く含む食品を毎日の食事に取り入れて、亜鉛不足を防ぎましょう。
亜鉛の過剰摂取
亜鉛の過剰摂取は、嘔吐、下痢、食欲不振などの症状を引き起こす可能性があります。亜鉛の過剰摂取を防ぐために、サプリメントを摂取する際は、用法・用量を守って摂取しましょう。
まとめ
亜鉛は、体内で作ることができない必須ミネラルの一種です。亜鉛が不足すると、味覚障害、口内炎、皮膚炎、脱毛、免疫力の低下、疲労感、風邪などの感染症にかかりやすくなるなどの症状が起こる可能性があります。亜鉛を多く含む食品を毎日の食事に取り入れて、亜鉛不足を防ぎましょう。