歯って、ただ噛むだけじゃないって知ってた?
歯には、人間の生命維持に欠かせない重要な役割があるんだ。
例えば、食べ物を噛んで消化を助けるだけでなく、
表情を作るときにも使われるんだ。
そんな歯には、まだまだ知られざる秘密やトリビアがいっぱいあるんだ。
今回は、そんな歯の不思議なトリビアを紹介するよ。
江戸時代の歯痛治療、庶民はどうしていた?
現代のように歯科医院が当たり前に存在する時代では、歯痛に悩んだらすぐに治療を受けられます。しかし、江戸時代には歯科医師はごく限られた存在で、一般庶民が歯科治療を受けることはほとんど不可能でした。
そこで、江戸時代の庶民は、手作りの民間薬やおまじないなど、さまざまな方法で歯痛を治そうとしました。
民間薬には、大根おろし汁を耳から注ぐ、ニンニクやウコンをすりおろして患部に貼る、といったものがありました。また、神社に歯痛平癒の絵馬を奉納したり、半紙を4回折って痛む歯で噛むといったおまじないも流行りました。
しかし、これらの方法はどれも効果が不確実であり、中にはかえって体調を悪化させてしまうものもあったようです。
そんな中、江戸時代の儒学者・貝原益軒は、歯を叩くことで歯を丈夫にして虫歯を予防できるという説を唱えました。この説は、12世紀の中国の医書に記された「叩歯(こうし)」という歯のケア方法に由来しています。
叩歯とは、歯をカチカチ鳴らすことで歯の骨を丈夫にする噛む健康法です。現在でも中国気功で行われています。
貝原益軒の説は、現代の医学的知見からも、ある程度は正しいことが認められています。歯を叩くことで、歯の血行が良くなり、歯茎の健康が促進されるという研究結果が報告されています。
また、歯を叩くことで、歯の表面にあるエナメル質が削られて、虫歯菌が歯の内部に侵入しやすくなるという説もありますが、その効果は限定的であるとされています。
いずれにしても、江戸時代の庶民が歯痛に苦しんでいたことは想像に難くありません。現代のように気軽に歯科治療を受けられる時代だからこそ、歯の健康をしっかりと維持しておくことが大切です。
仏歯寺の秘宝、ブッダの犬歯
仏教国スリランカの聖都キャンディには、世界遺産に登録されている「仏歯寺」があります。この寺院には、ブッダの右側の犬歯が祀られていることで知られています。
ブッダの犬歯は、紀元前に入滅したブッダの遺骨や遺品として、インド各地に分割されました。そして、4世紀にスリランカに持ち込まれ、以来、スリランカ王朝の王権の証として、代々受け継がれてきました。
スリランカ王朝は、度重なる侵略によって、首都を何度も移転させなければなりませんでした。しかし、ブッダの犬歯を守ることが王朝の最大の使命であり、そのために、多くの王たちが命を落としました。
ブッダは、歯の清潔を重視していたといわれています。弟子たちには、歯を清めてから読経するように説き、爪楊枝の原型である「歯木」による歯磨きを奨励したそうです。
仏歯寺に祀られているブッダの犬歯も、きっと丁寧に手入れが行き届いていることでしょう。その犬歯を前に、世界中から多くの仏教徒が参拝に訪れます。彼らは、ブッダの教えを心に刻み、平和と幸福を祈るのです。
古代ローマ人の驚きの口腔ケア法
古代ローマの庶民は、口臭予防のためにニンニクを塗ったパンを食べていたといわれています。そんな彼らは、食後のうがいにも工夫を凝らしていたようです。
その驚きの方法とは、なんと尿によるうがいでした。
尿によるうがいは、古代ローマだけでなく、古代ギリシャや中国でも行われていたといわれています。
18世紀のフランスの医学者、ピエール・フォシャールも、著書『歯科外科医』の中で、尿によるうがいを勧めています。
フォシャールは、虫歯は「歯虫」による病であるという当時の定説を否定し、食後のうがいによって歯についた食べかすを洗い流すことで虫歯や歯肉炎を改善できると説いた人物です。
日本でも、昭和30年代に尿素を混ぜた練り歯磨きが発売されています。
現代でも、ホワイトニングには過酸化尿素が用いられています。
尿素には、軽度の殺菌効果があることが認められています。
歯科医学が確立する以前から、尿に含まれる尿素の科学的効果を察知していた古代ローマ人の知恵には驚きです。
歯周病は人類の歴史とともにあった
歯周病は、歯を支える骨や歯肉が破壊される病気です。現代では、歯周病は成人の約8割が罹患しているといわれています。
しかし、歯周病は戦後に多く発生した病気ではありません。
遥か昔のネアンデルタール人でも、発掘されたあごの骨から歯周病の痕跡が認められています。また、古代エジプトのミイラには歯周病による歯肉の炎症が痕跡として認められ、古代の人が歯周病になっていた重要な証拠です。
古代人がどんな食生活を送っていたのか定かではありませんが、虫歯の要因とされる砂糖のような甘味のある食べ物が習慣となっていた可能性があります。また、歯磨きの文化があったのかどうかによっても左右されますが、歯周病は遥か昔から存在していた歯の病気であることに違いはありません。
歯周病は、口腔内の細菌が原因で引き起こされます。歯垢や歯石に付着した細菌が歯肉を刺激して炎症を起こし、歯周病菌が歯茎の奥深くまで侵入することで、歯を支える骨が破壊されていきます。
歯周病は、初期の段階では自覚症状がほとんどないため、気づかないうちに進行してしまうことがあります。しかし、進行すると歯が抜け落ちてしまうこともあるため、早期発見・早期治療が大切です。
歯周病を予防するためには、毎日のブラッシングやデンタルフロス、定期的な歯科検診を欠かさないようにしましょう。また、甘いものの摂りすぎや喫煙も歯周病のリスクを高めるため、注意が必要です。
歯周病は、人類の歴史とともにあった病気です。現代でも、歯周病は多くの人に悩みを与える病気です。日頃の口腔ケアと定期的な歯科検診を習慣にして、歯周病を予防しましょう。