「呼吸って、ただ息を吸って吐くだけでしょ?」
そう思われている方も多いのではないでしょうか。でも、呼吸には、実は私たちの体や心を大きく左右する秘密が隠されているのです。
たとえば、呼吸は、脳の働きを活性化させる効果があると言われています。また、ストレスを軽減したり、免疫力を高めたりすることもできるのです。
そんな呼吸の秘密を、今回はいくつかご紹介します。
【ギネス世界記録】息止め最長記録は24分3秒!
人間は、呼吸をしなければ生きられません。しかし、どれくらい呼吸を止めることができるのでしょうか?
ギネス世界記録によると、水中で息止めの最長記録は、2015年にスペイン人のアレイクス・セグラ氏が記録した24分3秒です。これは、2012年にドイツ人のダイバーが記録した22分22秒を上回る記録です。
セグラ氏は、記録に挑む前に、純酸素を吸入して、体内に酸素を蓄積していました。また、水中で呼吸を止めている間も、呼吸法を用いて、体内の酸素を効率的に活用していました。
陸上での息止めの最長記録は、2016年にロシア人のエフゲニー・マルコフ氏が記録した24分37秒です。こちらも、純酸素を吸入して記録に挑んでいました。
なお、酸素ボンベを使わずに水深100mの素潜りを行った、フランス人ダイバーのジャック・マイヨール氏は、3分40秒の息止め記録を残しています。当時、水深40m以上で3分を超えると肺が水圧でつぶれると言われていましたが、マイヨール氏は、禅やヨガの呼吸法を用いて、この常識を覆しました。
人間の息止め能力は、訓練によって向上させることができます。しかし、息止めは命にかかわる行為です。決して無理をせず、安全に楽しみましょう。
【驚愕】動物の寿命と呼吸回数に驚きの相関関係が!
私たちは、生きていく上で呼吸を欠かすことができません。では、一生のうちに呼吸をどれくらい繰り返すことになるのでしょうか?
生物学者・本川達雄氏の著書『ゾウの時間ネズミの時間』によると、哺乳類の一生の心拍数は約20億回とされています。そして、1回の心拍数の間に2回の呼吸が行われるため、一生に呼吸する回数は5億回程度になると考えられています。
しかし、体の大きさによって、呼吸の回数には違いがあります。体の大きさが大きい動物は、体の大きさが小さい動物よりも、1回の呼吸の時間が長く、呼吸の間隔が広くなります。そのため、体の大きさが大きい動物の方が、一生に呼吸する回数は少なくなります。
実際、クジラは寿命が70年以上、ゾウは60年以上、ウシは20年前後、ネズミは2年前後と、体の大きさと寿命は比例しています。
人間の場合、呼吸の間隔は、体の大きさが大きい動物に比べると短いものの、心拍数は基準値(健康な成人の安静時の心拍数は約60~100回)よりも高い人ほど、心疾患のリスクが高くなるという研究データもあります。心拍数が高いということは、呼吸が速いということです。
したがって、呼吸は、寿命や健康に密接な関係があると考えられます。意識的にゆったりとした呼吸を心がけることで、健康寿命を延ばすことができるのではないでしょうか。
【呼吸を制する者が勝つ!】スポーツとの関係は?
呼吸は、私たちの生命活動に欠かせない行為です。スポーツにおいても、呼吸は勝敗を左右する重要な要素であるといわれています。
武道では、隙を作らないために腹筋を使ってへその奥に位置するといわれる「丹田」に息を集め、長く息を吐く「丹田呼吸法」を行います。これにより、体幹を安定させてバランスを保ち、集中力を高めることが期待できます。
格闘技のキックボクシングでは、鼻から大きく息を吸って腹圧を高め、絞った息を吐きながら鋭いパンチやキックを繰り出します。これにより、より強力なパンチやキックを打つことができます。
卓球やテニスなど、瞬発力が求められるスポーツでは、大きな声を発することで気合を入れ、呼吸を整える効果があるといわれています。
一方、駅伝やマラソンなどの持久系スポーツでは、規則正しい呼吸が重要です。息が乱れることで体内に十分な酸素を取り込むことができなくなり、スタミナ切れや故障の原因となるからです。
また、サッカーやラグビーなどのチームプレイでは、チームメイト同士の「阿吽の呼吸」が不可欠です。阿吽とは、互いの呼吸や動きがぴたりと合うことを表す言葉です。阿吽の呼吸ができていれば、チームとしてよりスムーズにプレーを展開することができます。
さらに、スポーツ以外の場面でも、呼吸は重要な役割を果たします。例えば、餅つきでは、つき手と返し手の阿吽の呼吸が不可欠です。阿吽の呼吸ができていれば、効率よく餅をつくことができます。
このように、スポーツや餅つきなど、さまざまな場面で呼吸は重要な役割を果たしています。呼吸を意識することで、より高いパフォーマンスを発揮することができるかもしれません。