アレルギーを持っている人は、世界人口の約4人に1人。日本でも、約3割の人がアレルギーを持っているといわれています。
アレルギーは、体内に侵入した異物を排除しようとする免疫反応が過剰に働くことによって起こる症状です。花粉症やダニ症、食物アレルギーなどが代表的なアレルギーです。
アレルギーは、なかなか治りにくい症状で、生活に支障をきたすこともあります。そのため、アレルギーについて正しい知識を身につけておくことは大切です。
そこで今回は、アレルギーの意外な雑学をご紹介します。
花粉症の新しい治療法、食パン減感作療法
花粉症は、スギやヒノキなどの花粉によって引き起こされるアレルギー性鼻炎の一種です。日本では、約20人に1人が花粉症に悩まされているといわれています。
花粉症の治療には、主に以下の3つの方法があります。
- 薬物療法:抗ヒスタミン薬やステロイド薬などの薬を服用する
- 減感作療法:アレルゲンに対する免疫を抑える治療
- 手術療法:鼻粘膜を切除する治療
薬物療法は、花粉症の症状を緩和するために最もよく行われる治療法です。しかし、薬を飲み続けることで副作用が出る可能性があるというデメリットがあります。
減感作療法は、アレルゲンに対する免疫を抑える治療法です。注射や舌下投与などの方法でアレルゲンを体内に入れることで、アレルゲンに対する免疫を徐々に低下させていきます。減感作療法は、効果が持続する可能性があるというメリットがあります。
手術療法は、花粉症の症状が重い場合に行われる治療法です。鼻粘膜を切除することで、花粉が鼻腔内に侵入する量を減らすことができます。しかし、手術による副作用が出る可能性があるというデメリットがあります。
近年、花粉症の治療に新しい技術が登場しています。その一つが、食パンを用いた減感作療法です。
この療法では、スギ花粉のエキスを食パンに含ませて舌の裏側に置き、唾液で溶かして体内に取り入れます。食パンは、アレルゲンを体内に取り入れやすいように工夫されています。
食パンを用いた減感作療法は、まだ開発段階ですが、従来の減感作療法に比べて、副作用が少ない可能性があるというメリットがあります。また、治療期間も短縮できるという期待もあります。
食パンを用いた減感作療法は、まだ広く普及していませんが、今後の花粉症治療に新たな可能性をもたらす可能性があります。
ウィンブルドンで花粉症に注意!
花粉症の歴史を振り返ると、19世紀初頭まで遡ります。当時、イギリスでは農夫が牧草を刈り取って運んでいる際に、くしゃみやのどの痛み、涙が止まらないといった症状が相次ぎました。この現象は「hay fever(枯草熱)」と呼ばれていました。
学者による原因分析の結果、アレルギーの元はイネ科の牧草であるカモガヤにあることがわかり、そこから「花粉症」と呼ばれるようになります。カモガヤの花粉が飛散する距離は数十m程度と、スギに比べると拡散しにくいのですが、牧草地や芝生の多いイギリスならではの花粉症だったといえるでしょう。
今でも5月頃から8月頃にかけてイギリスでは花粉症に悩む人が多く、「芝生の回りでキャンプしてはダメ」と言われているほどです。
一方、日本の花粉症といえば、その大半がスギ花粉によるものといわれています。スギ花粉症が最初に報告されたのは1964年のこと。以来、増加の一途を辿っているのはご承知のとおりです。
ここまでスギ花粉症に悩む人が多い国は、世界でも稀です。その理由は、日本が戦後に行った「スギの大量植樹」にあります。
終戦で焼野原となった日本には、大量の材木が必要でした。そのため、50年代には森林伐採が盛んになります。しかし、木を切り倒しすぎてしまったために、山々では治水が行き届かなくなり、ガケ崩れや洪水の危険が高まりました。そこで、新たに木を植えることになったのですが、この時、選ばれたのが杉の木だったのです。
本来なら、さまざまな種類の木を植えるべきだったのですが、杉は成長が早く、木材としての価値も高いということで、杉ばかりを植えてしまいました。利益優先で突き進んだ高度成長期のツケが、今になって出てきたといえるかもしれません。
そんな中、テニスの四大国際大会のひとつ、ウィンブルドン選手権が開催される時期は、イギリスの芝花粉症まっただ中です。試合会場周辺は、延々と芝生が広がっています。もし日本から観戦に出向くなら、スーツケースにマスクをしのばせておくことをおすすめします。
マスクを着用することで、花粉を吸い込む量を減らすことができます。また、鼻や目の粘膜を保護することで、症状を緩和することができます。
ウィンブルドン選手権を観戦する際には、ぜひマスクを着用して、快適に試合観戦を楽しみましょう。
アレルギーはキスで移るのか?
アレルギーは、特定の物質に触れたり、摂取したりしたときに、体内に過剰な免疫反応が起こることで引き起こされる疾患です。食物アレルギー、花粉症、アトピー性皮膚炎など、さまざまな種類があります。
アレルギーは、遺伝的な要因と環境的な要因の両方によって引き起こされます。遺伝的な要因が大きく影響すると考えられています。
では、アレルギーはキスで移るのでしょうか?
結論から言うと、キスによってアレルギーが移ることは、ほとんどありません。
アレルギーを引き起こす物質(アレルゲン)は、唾液中に含まれることがあります。しかし、唾液中に含まれるアレルゲンの量は非常に少なく、キスによってアレルギーを引き起こすほどの量はほとんどありません。
ただし、重度の食物アレルギーの人は、アレルゲンを含む食品を食べた直後にキスをすると、アレルギー反応を起こす可能性があります。これは、唾液中にアレルゲンが残っているためです。
そのため、重度の食物アレルギーの人は、アレルゲンを含む食品を食べた後は、キスを避けるようにしましょう。
また、キスによってアレルギーが移るという誤った情報から、アレルギーの予防や治療にキスが効果的であるという主張も見られます。しかし、キスにはアレルギーの予防や治療の効果は認められていません。
むしろ、アレルギーの予防には、親子のスキンシップが効果的であるという研究結果があります。
和歌山県立医科大学の久保良美氏らの研究によると、乳児期に親と唾液を介して接触した子どもは、アトピー性皮膚炎や喘息などのアレルギー疾患を発症するリスクが低いことが明らかになっています。
この研究結果から、親子のスキンシップは、アレルギーの予防に役立つと考えられています。